一部の意識の高い方から見れば「まだまだ...」と思われているかもしれませんが、ペットの飼い方は5年、10年前から比べるとずいぶん進歩してきていると思います。
その結果、伝染病などで命を落とす子が少なくなり、長生きするようになった反面、高齢になって難しい病気にかかる子が増えてきました。
また、ペットブームに後押しされた乱繁殖の結果、生まれつき抵抗力の弱い子や遺伝疾患に罹った子も増えてきています。(あくまで私見ですが)
そのような背景から、ペットに対する高度医療の窓口もだいぶ増えました。
以前は大学病院でしか受けられなかった検査や治療が、個人で開業している専門医によって受けられるようになってきています。
また、飼い主向けに書かれた書籍も充実してきました。
これまでは飼い方全般について統括的に書かれていたものが多かったのですが、ジャンルが細分化され、栄養や病気に関する専門的な本が出版されるようになってきています。
選択肢が広がったことは喜ぶべきことですが、このような本が必要とされるほどにペットの病気が増えているということでもあり、読む側は複雑な心境になりますね。
今までは情報収集を洋書やネットに頼っていたのですが、このたび日本獣医生命科学大学(旧日本獣医畜産大)の鷺巣先生が編まれた本がとても参考になりましたのでご紹介します。
がんという病気について、検査や治療法について、がんと診断されたペットの日常生活について、ターミナルケアや死後のことについて...など多岐にわたる内容になっています。
この「ペットががんになった時」(三省堂)という本は、飼い主の獣医療への意識向上を反映してか、専門的な内容が多く偏りの少ない充実したものになっています。
以前、同様にペットのがんについて書かれた本を斜め読みしてみたことがあったのですが、そこでは最後に特定の健康食品を推奨するような流れになってしまい、少し残念に思っていました。
この本では西洋医学にこだわらず、代替療法もいくつか紹介されていますが、全般的に「これでなければダメ」というような押しつけの少ない内容になっていて好感が持てました。
代替療法については頭ごなしに「非科学的」という見方はされておらず、生活の質を向上させるための手段としてまじめに取り上げられています。
また、飼い主として気になる部分やわかりにくい部分、迷いの多い部分を中心に想定された多岐にわたる質問に対して、獣医が答えるという一問一答型の構成になっているのも理解しやすく評価できる点だと思います。
現在闘病されている方は、知りたい項目だけを選んで読み始めることもできます。
実際私も、まだ自分に直接関係のない部分(猫ちゃんのがんについてやペインコントロールについてなど)は未読です。これから少しずつ読み進めていこうと思っています。
ただ、詳しく取り上げられているがんの種類は決して多くはなく、珍しい種類のがんと闘う飼い主さんにはその点が物足りないかもしれません。
平易に書かれているとは言っても、やはり医学用語が多く、がんができて初めて大きな手術を受けたり強い薬を処方された飼い主さんにとっては、とっつきにくい部分もあるかもしれません。
ですが、この本で理解できなかった用語に関しては主治医にご質問されるなどして知識を蓄えることはできると思いますし、そうされることでご自身のペットがどのような検査、治療を受けているのかをより深く理解することにつながっていくと思います。
私も、3年にわたってルナの乳がん治療に取り組んできましたが、抗がん剤のしくみや放射線治療、免疫療法についてなど、聞きかじりの知識だけだった部分を改めて勉強することができました。
また、今後病気を抱えたまま高齢になったとして、その後の介護に不安を感じることもありましたが、立てなくなった時、歩けなくなった時、食事を受けつけなくなった時、ワクチンやフィラリア予防はどうしたらいいのかなど、細かいシチュエーションに対応した質疑が取り上げられていて、とても参考になりました。
ターミナルケアなども今は冷静に読めるのですが、その時が来たらとても読んではいられないと思います。今のうちに少しでも考える機会が持ててよかったと思います。
ただ、過去に自分が経験してきた部分...たとえば外科処置のことや、予防的に抗がん剤を入れた時のことなどを思い出させられるくだりもあり、そこを読むのはつらいものがありました。
獣医さんとまさしくこんなやりとりをしたよなぁ...って思うような文章になっているせいかな...
あと、帯に書かれたあおりはちょっとストレートすぎて無神経な表現に思えるかもしれないです。

